泉崎ファミリー歯科(沖縄県那覇市)の院長である下所由美子先生に先生目線でのインプラント治療のこと、患者さんのことについて聞いてみました。インプラント治療の成功率や施術の難易度、治療してくれる歯科医の見極め方に至るまで質問に答えていただきましたので、是非参考にしてみてください。
父親が胃腸科の開業医として働いていたので、その後ろ姿を見て医療系に興味を持っていました。高校生にいくつか医療系を志望しましたが、手先の器用さが活かせることや、人と接する機会が多いとことから歯科医を目指すことにしました。歯科医の女医さんで、結婚して子供を育てながらも仕事をされている親戚がいたのもきっかけの1つです。
大学を卒業した後は地元の琉球大学附属病院の口腔外科で研修医として勤務しました。口腔外科ではいろんな重症な患者さんが幅広く1つの設備に集まってくるので、歯科医の人数は多くはありませんが、多くのがん患者さんを診療する必要がありました。ハードだなと思うことはありましたが、おかげさまで多くの経験と自信を身につけることができましたね。
家族の事情で沖縄に帰り、勤務医として研鑽を続け自信と経験を身につけた上で2年前から泉崎ファミリー歯科を開業しました。働いていたクリニックでは患者さんの回転数が多いために1人1人への接遇がおざなりになっていた場所もありました。こうしたことの無いよう、これからも患者さんとは出来るだけ時間を取って寄り添えるクリニックを作っていきたいと考えています。コロナ禍でも、ご自身の歯と定期的にきちんと向き合ってもらいたいと思い、オンラインで質問を受け付けたり、WEB予約が出来るようにしたりとシステムを導入いたしました。患者さんが少しでも歯科クリニックへ気軽に楽しく通えるようにこれからも努めていきます。
インプラント治療を行い、10年後に95%以上がインプラントを保持ができているという論文が発表されています。この数字だけを見ると成功率が高いように思いますが、実際はこの論文には難しい症例が含まれておらず、比較的条件が良い人を選んでいるためにこの数字が達成できているのだと思います。
インプラントを打つために骨を作ることがありますが、自分の骨を移植するとは言え、骨を作った場合はその部位が異物と認識されてしまい、インプラント周囲炎が起こる可能性が高くなります。リスクのある患者さんには一概に95%の成功率と説明するのではなく、一度インプラントを打ち直したり、何かしらリカバーをすることもあると説明しています。
入れ歯やブリッジに比べたらインプラントは難易度が高い治療法です。私がインプラントの治療を習得したなと感じたのは、インプラント患者さんの多い職場の中で間近でインプラント治療を経験させて頂きながら1〜2年ほどかかった印象です。
昔のインプラント治療は執刀医の勘所など、歯科医の感性に頼らざるを得ない面がありました。現在は治療技術も向上し、ある程度習得できれば補助器具(ドリルの穴が空いたマウスピースなど)を使ったり、インプラントを打つ前に診査・診断をすることで、再現性のある質の高い治療が出来るようになりましたね。
まず抜かなければならない歯があったとして、歯を抜いたまま放置せず何らかの治療とセットでやっていただくことが大切です。歯は抜いて何もせず2ヶ月が経過すると徐々に骨が痩せていってしまいます。ただ、クリニックによっては忙しすぎて、歯を抜いた後のアフターケアについてフォローがあまりない場合もあるようです。
抜いた後の治療にはインプラント以外にも、ブリッジ・入れ歯という方法があることを知っておいて頂き、歯を抜いたらなるべく早めに歯科医と相談しながらいずれかの最適な治療計画を立てていくようにしましょう。
インプラント治療がしたい!という方は、できれば歯を抜く前からインプラント治療を想定して歯科医にかかられると良いです。インプラントは埋め込む骨がきちんと土壌として整っていた方が成功率が高まります。周囲に化膿や炎症があると、丁寧に歯を抜く必要があったり、すぐにインプラントを打つわけではなく、できるだけ事前にリスクが低い状態に持っていくための準備が必要となります。
問題が起こるケースはあります。例えば、見た目に影響が大きい前歯は、骨が痩せやすいためにインプラント治療が一番難易度が高くなります。元の歯にある骨を移植したりすると、インプラントを入れた後に隣の歯に比べて白い歯が長く見えてしまい、見た目に影響が出ることがあります。
インプラントを入れた後のイメージは手術前にCT診断によって確認することができます。歯茎がバランス的に長く見えてしまったり、金属が見えてしまうかも、など診査の段階である程度起こりうるリスクは想定可能です。
術前にCTを行い、インプラントを入れる骨や周囲の血管の状態を見て、リスクが高いと判断された場合は切らない治療はあまりお勧めできません。いざ手術に入った際に想定よりも骨がなかったり、切ることで判明することもあるので切る治療の方がリスクを抑えられると思います。
逆に骨を足していたり、健康的に骨が残っている状態であれば、切らない治療も候補の1つとして考えて良いと思います。今はサージカルステントという、CT上で設計した正しい場所へインプラントを正確に打ち込むための補助器具もあり、リスクを抑えて治療することが可能です。
インプラント治療は数十万円〜と決して安くありませんので、費用面で悩まれる方は多いと思います。費用を抑えるために、デンタルローンを利用して分割払いで月々の支払額を抑えることはできます。使用するインプラントメーカーによっても値段に差がありますので、かかりつけ医へご相談してみてください。
インプラントの治療に悩まれた際は、ぜひ費用対効果を考えて頂きたいです。失った歯を補うためには他にもブリッジという治療法があり、こちらは保険診療の適用となるためインプラントよりもかなり安価で受けられますが、持って10年程度で長くは持ちません。
20〜30代の若い患者さんへお話する場合、「40万円のインプラントは500円貯金を2年ほど継続する分に該当します。タバコを2年ほど我慢することで論文にもある通り10年間で90%以上健康な歯の状態を担保できますよ」といった説明をしています。
50-60代の患者さんには、全体的に何年後には抜くかもしれない歯や差し歯のリスクについて説明します。歯の健康な状態を維持するために全て保険診療で済ませることはかなり難しいです。全部ではなくともキーポイントとなる歯だけでもインプラントに変えるだけで見違えるように良くなりますので、同じく費用対効果で考えていただくことが必要だと思います。
1つの指標ではありますが、口腔インプラント学会の認定施設の100時間講習というセミナーがあり、このセミナーを修了している先生はある程度の技術を習得されていると考えて良いと思います。学会では他にも様々なセミナーを開講していますので、その受講証が院内に掲示してあった場合は内容もチェックしてみると良いかもしれません。
認定医という制度もありますが、地方のクリニックでは取得することが大変難しく、沖縄でも数人程度しかいらっしゃいません。認定医が無くても腕のある先生は数多くいらっしゃいますが、お持ちの先生がいたら、その分ご経験はお持ちだと判断できるとは思います。
手術自体だったり、費用だったり、不安になる点が人それぞれ違うと思いますので、悩みを払拭できるように話を寄り添って聞いてくれる先生から1つ1つ解決してもらうようにしましょう。手術の痛みに対しては麻酔で対処できますし、費用は分割払いにしたり、安価なインプラントメーカーを使えば費用を抑えることも可能です。
カウンセリングを受けてみて、手術を即決しなかったとしても、2年後3年後にインプラントを考え直しても良いと思います。定期検診を都度受けていたら、他の歯が悪化してしまうリスクも歯科医の先生から指摘を受けると思いますので、こうしたリスクがあるということだけでも、頭に入れておきましょう。
先ほどもお伝えしましたが、インプラントの治療が可能なお口の状態であれば、インプラントをすることで、健康な歯の指標である80歳20本以上を達成しやすくなります。他のブリッジ治療を選択したとしても、手術を終えたら永遠に歯の問題が解決されたわけではなく、毎年定期検診のたびに状況は変わっていきます。美味しく食事をして健康的な生活を続けていくためにも、長い目で見て、起こりうるリスクに備えることが大切です。
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