前歯のインプラントは他の部位よりも難しい!?
失ってしまった歯、損傷してしまった歯の治療にはブリッジなどの方法がありますが、使用頻度も高く、美しさが求められる前歯は特に、インプラントで治療した方がメリットは大きいと言えます。どんなメリットがあるのでしょうか?また、治療を受ける前にデメリットやリスクについても確認しておきましょう。
普段、何も意識せずに何気なく使っている前歯。いった前歯には、どんな役割があるのでしょう? じっくりと考えてみた経験がある人はごく少数だと思うので、ここではまず「そもそも前歯ってなんであるの?」について解説したいと思います。前歯には重要な3つの役割があります。
奥歯には「食べ物をすりつぶす働き」があるのに対して、前歯には「食べ物を嚙み切る働き」があります。前歯で噛み切れない食べ物は、奥歯の力をもってしても、すりつぶせないことがあります。
前歯は、正しい発音、またスムーズな発音に大きく関わっています。前歯がない状態でサ行を正しく発音することは、非常に難しいことをイメージできるでしょう。
前歯は表情の一部を構成しています。前歯がない状態での笑顔には、少々違和感があります。また前歯がないと唇の一部が内側に落ち込み、全体的に老けた印象となります。
以上が、前歯が持つ3つの重要な役割になります。 想像してみてください。これら役割のすべてが欠けた場合、いかに日常で苦労することでしょうか。前歯を欠損した場合には、早急な治療が必要なのです。
前歯が抜けてしまったり損傷してしまったりした場合には、ブリッジかインプラント治療を検討することと思います。前歯は奥歯に比べて頑丈な骨がないため、場合によってはブリッジを提案されることもありますが、インプラントにはブリッジと比較したときにメリットが多くあります。
まず、インプラントはブリッジのように、周囲の健康な歯を削らずに済みます。これは大変大きなメリットだといえるでしょう。歯を削ってしまうと土台の歯の寿命が短くなりますし、ブリッジは隙間があきやすく、そこから虫歯にもなりやすいのです。結果的に、両隣の歯も抜かなくてはいけないケースもあります。インプラントの場合は他の歯に影響することなく、歯を取り戻すことができます。
耐久性について、ブリッジもインプラントも「何年もちます」とは医師は断言はできません。しかし、ブリッジは10年持てば成功と言われますが、インプラントは適切な手術と管理を行うことで、50年持つ臨床例が報告[※1]されています。50年前よりも現在の技術の方がはるかに進歩していますので、正しい手術とメンテナンスによってインプラントが長持ちする可能性も期待できるでしょう。
さらに、インプラントは物を噛み切るときにぐらつきを感じることがありません。自分の歯と同じような感覚でものを食べることができます。
[※1]参照元:インプラント治療手順/日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 4 : 18-26, 2012
ブリッジをする場合、抜けた歯と隣り合わせていた両側2本の歯を細く削る必要があります。つまり、削る必要のない健康な歯を削る、ということになります。それに対してインプラントは、他の歯をいっさい侵襲せずに治療を完了させることができます。 ブリッジで削られた歯は、虫歯になりやすくなったり、寿命が縮んだりすると言われています。その意味において、他の歯を侵襲しないインプラントのほうが、優位性のある治療と言えるでしょう。
歯が抜けた部分に義歯(入れ歯)を入れる治療も、一般に行なわれています。手軽で便利な義歯ですが、強い力には弱いというデメリットがあることも認識しておきましょう。強く噛むと、簡単に義歯が外れてしまいます。自分の歯が存在していたころに比べ、強い違和感・不安定感を抱くことでしょう。 それに対してインプラントは、人工歯根を顎の骨と接着させる治療法。自分の歯とまったく同じような安定感があり、噛み合わせに何らかの違和感を覚える可能性は考えにくいでしょう。
ブリッジもインプラントも、患者本人のケアによっては、その寿命が伸びることもあれば、縮むこともあります。ただ、歯科医師から受けた適切なケアを継続している限り、ブリッジは10年、インプラントは50年の寿命を持つと言われています。 最長10年の寿命であるブリッジは、やがてもう一度、あるいは二度、いやもっと、治療しなおす必要が出てくるかも知れません。それに対してブリッジは、治療を受けたときの年齢にもよりますが、ともすると一生涯、治療をし直す必要がないかも知れません。
恐らく、インプラントを受けた前歯を見て、それを一瞬でインプラントと判断できる人は、一部の歯科医師以外にいないでしょう。インプラントは、それだけ天然歯に近い審美性を備えています。 それに対し、たとえば義歯(入れ歯)の場合は、器具の存在や表面の質感で、素人でも一瞬にして義歯と判断できます。ブリッジにおいても、高額で高品質のセラミックなどを使用しない限り、見た目に少々違和感が生じることは避けられません。
前歯の治療が難しいとされる理由は、前歯において骨吸収と歯肉退縮が起こりやすいこと[※2]です。
骨吸収とは、前歯を支えている顎の骨が、時間とともにだんだん少なくなっていく症状。もともと前歯を支える骨は非常に薄いため、インプラントにおいては骨吸収が起こりやすい部位。技術力の高い歯科医師が治療をしなければ、そのリスクが高まるとされています。 また骨吸収を起こした部位では、歯茎が縮んでいく歯肉退縮が起こりやすくなります。歯肉退縮を起こすと、徐々に歯が長く見えるようになったり、金属の人工歯根が露出したりなど、まずは審美性の問題が生じてきます。さらに食べ物のカスや細菌なども侵入しやすくなるため、インプラント周囲炎を起こすリスクも高まります。
これらリスクを確実に回避するためには、高度な専門知識と十分な臨床経験を積んだ歯科医師による治療が必須。これが前歯のインプラントが難しいと言われるゆえんなのです。
前歯のインプラントで考えられるリスクとしては、神経麻痺(正式名称は「下歯槽神経の知覚異常」「下歯槽神経の鈍麻」)があげられます。神経麻痺の多くは下顎で起こり、インプラント手術の際に下顎神経に触れたり、近かったりした場合に神経自体が損傷され、下歯槽神経の麻痺[※3]が起こる可能性があります。唇をうまく動かせずに口に含んだ水をこぼすなどといった影響が出ますが、下顎神経は運動神経ではありませんから、顔を動かすなどの運動機能には麻痺は起こりません。
[※2]参照元:審美領域におけるインプラント補綴の要件/日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 4 : 18-26, 2012
[※3]参照元:下歯槽神経麻痺 - 東京歯科大学
前歯のインプラントを検討中の方は、以下の4点を必ず確認して失敗のない前歯インプラントを受けるようにしましょう。
歯が抜けた状態で長期間放置してしまうと、歯を支える骨の骨吸収が進んでしまいます。骨吸収が進むとインプラントを支える骨が脆弱になってしまうため、ともするとインプラント治療自体ができなくなる可能性が生じます。特に前歯を支える骨は非常に薄く、骨吸収の影響を受けやすい部位。前歯が抜けたら放置せず、速やかにインプラントを受けるようにしましょう。
そもそもインプラントは自由診療なので、治療費は高額です。加えて麻酔代や薬代などもかかるため、予想以上に費用が掛かると思っておいて良いでしょう。しかも前歯は、奥歯などとは違って審美性も重視される部分。よって高価な素材が必要となるかも知れません。事後的な治療費のトラブルを避けるため、治療を申し込む前には必ず治療費の総額を確認しておきましょう。
前歯のインプラントに限ったことではありませんが、しかしながら特に前歯は審美性が重視される歯なので、治療後の保証についてはしっかりと確認しておいたほうが良いでしょう。インプラントが欠けてしまった場合や外れてしまった場合など、保証の中で速やかに再手術を行ってくれるかどうかは、クリニック選びの基準として重要なポイントです。
費用的な面との兼ね合いもありますが、前歯のインプラントを受ける場合にはセラミックやジルコニアなど、非金属性の被せ物を選ぶことをおすすめします。前歯は審美性が要求される部位。非金属性の被せ物を選ぶことで、歯茎から金属が透けてしまったり、歯茎が変色してしまったりすることを防ぐことができます。
骨が薄いため神経を傷つける恐れもあり、高度な医療技術が求められる前歯のインプラントですが、顔の見た目や表情、発音などにまで影響のある大切な部位だからこそ、絶対に失敗したくありませんよね。そのためには熟練の医師を丁寧に探すことが必要不可欠です。
まずは、ひとつのクリニックに絞らずいくつかのクリニックで担当医のカウンセリングを受けてみましょう。不安や疑問に親身になって応えてくれるか、メリットだけでなくリスクも説明してくれるか、インプラントや歯科治療において実績が豊富かという点を確認しましょう。インプラントの治療を検討している場合でも、虫歯や歯周病、審美性など様々な課題をクリアする必要があります。そのため口の中のこと全てに対応ができる歯の総合医療機関の方が、全方位からの適切な専門治療を受けることが出来、より安心です。
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