インプラント治療の名医・名病院を探せるサイト「インプラントバンク」 » インプラント治療のギモン » 歯茎の歯肉移植手術って何するの?

歯茎の歯肉移植手術って何するの?

知っておきたい歯茎の歯肉移植手術に関するQ&A!下がってしまった歯茎を再生する手術のひとつ『遊離歯肉移植術』や『結合組織移植術』について紹介します。

歯茎の歯肉移植手術って何するの?(イメージ)
ギモン12Question12

歯茎の歯肉移植手術って何するの?

痩せてしまった歯茎をキレイに戻す画期的治療法!
歯肉移植手術法の詳細とは?

歯茎が下がったり痩せたりする症状が進んでしまったら、歯肉移植手術を検討される方も多いかと思います。ですが、歯肉移植手術とは具体的にどのような治療法なのでしょうか?手術の詳細のほか、施術中・後の痛みや、傷痕など、気になる情報に迫ります。

歯肉移植治療法その1:遊離歯肉移植術

歯の周囲の歯肉が元々少なく、薄い場合は、歯ブラシを当てるだけで痛みを感じることがあります。歯肉が不足していることで歯が露出してしまい、笑うと歯根の長さがガタガタの歯がむき出しになってしまうことでコンプレックスに感じている方もいらっしゃるでしょう。また、その状態のまま磨きつづけていると、歯肉が傷つき、歯肉退縮悪化の原因になることも考えられます。さらに、磨きにくいことで歯周病が進行しやすい環境をつくっている場合がありますので、早めに対処しましょう。

歯肉移植手術のひとつとしては、「遊離歯肉移植術」がまず挙げられます。 遊離歯肉移植術はFGGとも呼ばれている治療法[※1]で、上あごの口蓋から上皮の付いた歯肉を必要なサイズ分だけ切り取り、露出してしまった歯根やインプラントの周りに移植・縫合する方法です。

移植後一週間ほど歯肉の状態を見て、抜糸をして完成です。 移植された歯肉は数ヶ月後にはしっかりとした歯肉となり、歯磨きも難なく行えるようになります。また、移植元の歯肉も(個人差はありますが)数ヶ月で回復し、生活に支障もありません。なお気になる痛みについても、歯肉移植手術をする前に局部麻酔をしますので、術中に痛みを感じることはほとんどないでしょう。

歯肉には「乳頭歯肉」「遊離歯肉」「付着歯肉」の3種類があります。

乳頭歯肉
歯と歯の間にある歯肉のこと。歯間乳頭と呼ばれることもあります。歯周病になると痩せてくる部分でもあり、また加齢やブラッシング、歯科治療で減少してくる部分でもあります。
遊離歯肉
歯と肉の接点付近にある歯肉のこと。厚さ0.5~2mm程度の薄い歯肉です。歯肉溝という1~2mm程度の溝があり、歯ブラシなどで触ると少し動きます。
付着歯肉
歯茎の大部分を占める歯肉のこと。歯とガッチリ密着しているため、歯ブラシで触ってもほとんど動きません。

これらの歯肉のうち、遊離歯肉が徐々に下がってしまう症状のことを歯肉退縮と言います。歯周病や不適切なブラッシング、加齢、生まれつきの歯並びなどが原因となって起こる症状です。歯肉退縮を放置すると、審美面での問題だけではなく、知覚過敏や根面カリエス、歯周病の悪化といった厄介な問題にも発展しかねないので、速やかに治療を受ける必要があります。

歯肉退縮の治療法としてよく知られているのが、遊離歯肉移植術です。 遊離歯肉移植術とは、歯肉退縮を起こしてしまった部分に、別の場所から採取した歯肉を移植する手術のこと。 歯肉組織は、表面から順に「上皮組織」「結合組織」「骨膜」の3層で出来ていますが、融資歯肉移植術の際には、これら組織のうち「上皮組織」と「結合組織」をまとめて採取・移植します。手術から数か月後には遊離歯肉が安定し、見た目の問題も知覚過敏などの問題も概ね解消します。

なお、遊離歯肉移植術を受けた部位では、周辺の歯肉との間にわずかな色の違いが認められる場合がああります。よって審美性の点においては、歯茎が下がった点は改善されるものの、色調の点で難が生じることもあります。

[※1]参照元:歯科インプラント治療指針 - 厚生労働省

歯肉移植治療法その2:結合組織移植術

インプラントを埋入する部分が歯肉退縮してしまっていたり、痩せて薄くなってしまった歯肉、歯を抜いた後に土手ができてしまったりする場合に行われる歯肉移植手術が、「結合組織移植術」です。こちらはCTGとも呼ばれています。

結合組織移植術は、上あごの口蓋から結合組織のみを採取して、歯肉が不足している部分の上皮と骨膜との間に結合組織を移植して歯肉を増やす方法です。結合組織というのは、上皮組織・結合組織・骨膜の3層から構成されている歯茎の一組織のこと。歯肉の角化歯肉と呼ばれている部分が不足していると様々な弊害が起きやすく[※2]、それを予防する目的で行われることが多いです。

この治療を行うことで、歯根面を覆う周囲の歯肉を厚くすることができ、歯磨きをしても歯茎が傷つきにくい状態となります。インプラントが長持ちするのもメリットのひとつ。もうひとつの歯肉移植手術である「遊離歯肉移植術(FGG)」と比較すると、FGGの方は上皮組織と結合組織の2層を移植する方法で、CTGよりも手術的には比較的簡単です。ただ、歯茎の色に少々差ができてしまうので、仕上がりの美しさに期待ができるCTGと比べると、審美的な面で少し劣ります。

こちらの治療も「遊離歯肉移植術(FGG)」と同様、歯肉移植手術中に局部麻酔を行うため、痛みを感じることはありません。 ただし麻酔や痛みに不安がある方は、手術前に医師としっかりと相談をしましょう。

[※2]参照元:臨床報告 インプラント治療に結合組織移植を併用した1症例 - 山上 美樹他

歯肉移植治療法その3:歯肉弁根尖側移動術(APF)

歯肉弁根尖側移動術とは、歯周病などで歯周ポケットが深くなってしまった場合に、病変のある歯肉を切除・縫合する治療法のこと。抜歯が必要なほど歯が短くなってしまった場合にも、状態によってはこの治療法を用いることによって、差し歯やインプラント等の治療を回避することが可能です。
ただし、すべての患者において歯肉弁根尖側移動術が適応となるわけではありません。適応となるのは、歯周病の炎症が中程度(歯周ポケット5~6mm程度)の患者で、なおかつ適切な量の付着歯肉がある患者、さらに術後に生じうる審美的な変化を許容できる患者などです。

逆に不適応となるのは、歯周病が重度の患者、適切な付着歯肉がない患者、治療による審美的な問題が大きい患者などです。 歯肉弁根尖側移動術を受けることによって、患者には様々なメリットがもたらされます。たとえば歯周ポケットが除去できて歯周病が改善したり、あるいは遊離歯肉の位置が安定したりする点です。付着歯肉を維持できたり、また増大できたりという点もメリットと言えるでしょう。

一方で、歯周ポケットを除去することによって歯の露出面が広くなることから、知覚過敏、発音の違和感、審美性の問題などが生じる恐れがあります。また、歯科技術的にやや難度の高い部類に属するため、経験の少ない歯科医が執刀した場合、仕上がりに不都合が生じてしまう可能性がある点にも注意しなければなりません。
歯肉弁根尖側移動術が適応であるかどうかを的確に判断でき、なおかつ同治療の症例が多い経験豊富な歯科医師に相談をすべきでしょう。

その他の治療法:組織再生療法

歯周病などによって侵された歯茎を再生する治療として、組織再生法と総称される一連の治療法があります。薬剤投与などを通じて、歯周組織の再生を促す治療法です。以下では、組織再生法のうち代表的な歯科治療「エムドゲイン」「歯周組織誘導法(GTR)」「ボーングラフト(骨移植)」「多血小板血漿(PRP)」「CGF再生療法」「サイナスリフト法」「ソケットリフト法」の7種類について解説します。

エムドゲイン

エムドゲインは組織再生法の中でも、特に代表的な治療法の一つ。再生させたい骨のくぼみ部分にエムドゲインジェルと呼ばれる薬剤を投与し、歯茎が骨のくぼみに入り込まないよう防御します。
通常、歯の再生スピードよりも歯茎の再生スピードのほうが早いため、骨のくぼみが再生する前に、歯茎に侵入されてしまいます。この歯茎の侵入を防いで骨の再生を優先させるための治療法がエムドゲインです。エムドゲインジェルは、歯根の表面に2~4週間ほど定着。
その後、徐々に吸収させていきます。なお、エムドゲインは2002年に厚生労働省から認可を受けた効果的な治療法。世界40カ国でも採用されている治療法ですが、過去に1度も感染症の報告はありません。

歯周組織誘導法(GTR)

エムドゲインが骨のくぼみにジェルを投与する治療法であるのに対し、歯周組織誘導法(GTR)は、骨のくぼみにメンブレンと呼ばれる人工膜を覆う治療法[※3]。骨のくぼみへの歯茎の侵入を防ぎ、スムーズな骨の再生を促すことが目的です。
メンブレンを取り付けてから数ヶ月後、新しい歯槽骨と歯根膜が再生。その後、不要となったメンブレンを除去する処置をします。治療後の腫れや痛みなどが出る可能性もほとんどなく、体に負担の少ない組織再生法として知られています。
なお、歯周組織の状態によっては、この治療法が適応とならない可能性もあります。

[※3]参照元:再生治療を応用した歯周治療の現状 - 日本大学歯学部

ボーングラフト(骨移植)

歯周病や歯槽膿漏、虫歯などの影響によって、歯を支えていたアゴの骨が溶解して歯茎が痩せて見えることがあります。この溶解した部分に患者自身の骨、もしくは人口の骨を移植し定着させるのがボーングラフト(骨移植)です。
患者自身の骨を移植する場合には、移植される部分のすぐ近くから骨を採取するのが一般的です。治療後には痩せていた歯茎が盛り上がるため、ブラッシングのしやすい環境になります。ブラッシングが十分になされればプラークが溜まりにくくなり、結果として歯周病等のリスクを大きく軽減することができます。
また歯を支える骨が安定することによって、インプラントを行なうことができる環境にもなります。なお、ボーングラフトの有用性については、今現在のところ検証が重ねられている段階です。一部では、移植した骨が結合しないリスクもあるとの指摘もあります。

多血小板血漿(PRP)

患者自身の血液を採取して血小板を分離させ、傷を早く治す成長因子を抽出(主にPDGF、TFT-β、EGFなど)。これを凝縮して各種歯科治療に用いる技法を、多血小板血漿(PRP)と言います。
いわゆる再生医療の一種で、多血小板血漿を用いることによって、傷の治りが早くなるだけでなく、失われた歯や歯茎の再生も効率的に促されます。重症の歯周病治療やインプラント治療では、積極的に用いられている技法です。
なお多血小板血漿は、歯科治療分野のみならず、医療分野全般において用いられている画期的な治療。人間本来が持つ再生力を強く促す働きがあることから、外科的要素のある医療分野のほとんどで有用な手法とされています。

CGF再生療法

CGF再生療法は、基本的には多血小板血漿(PRP)と同じコンセプトの治療法。患者本人の血液から成長因子を抽出し、これを治療に応用するというものです。ただ、従来の多血小板血漿においては、成長因子の抽出技術に熟練を要したため、歯科医師なら誰でも簡単に導入できる技法とは言えませんでした。
加えて、製造過程において感染リスクのある添加物を混合させる必要もありました。CGF再生療法は、多血小板血漿におけるこれら欠点を克服。
機器の進歩によって成長因子を比較的容易に抽出できるようになったとともに、製造過程における添加物も不要となりました。現在では歯科治療技術の一つとして、歯周病治療やインプラントなど、幅広い分野に適用されています。

サイナスリフト法

上アゴの奥歯の骨の上には、上顎洞と呼ばれる大きな空洞があります。この空洞の内壁はシュナイダー膜と呼ばれる粘膜で覆われており、インプラントなどの治療でこの膜を傷付けると厄介な炎症を起こしてしまうことがあります。
そのため、生まれつき上顎洞までの骨が薄い患者などは、インプラント治療におけるリスクを抱えることになります。このリスクを回避するために行なわれる治療がサイナスリフト法。
上顎洞の骨に隙間を作り、その隙間に人工骨等を埋め込むことで、インプラントが確実に固定できる土台を作ります。サイナスリフト法は、決して簡単な手術ではありません。経験豊富な熟練の歯科医師の技術力がなければ様々な弊害が生じうる難度の高い手術とされています。

ソケットリフト法

ソケットリフト法は、サイナスリフト法と同じ目的で行なわれる別の手術法。上顎洞の骨を補強して、安定的なインプラント治療を行なうための骨移植手術です。サイナスリフト法が上顎洞付近の歯茎を切開して骨を削るのに対して、ソケットリフト法は、インプラントを埋め込むようにタテに歯茎を切開して人工骨を補填します。
サイナスリフト法に比べると外科手術の範囲が狭いため、その分、患者の身体的負担は軽くなります。一方、ソケットリフト法は視認性の低い状態での手術になるため、シュナイダー膜(上顎洞の粘膜)を傷付けるリスクはサイナスリフト法よりも高くなります。
かつ、万が一シュナイダー膜を傷付けた場合、その修復は困難とされています。熟練の技術力を必要とする、極めて難度の高い手術ということになります。

Twitter Facebook LINE B!ブックマーク

Page TOP