なぜ歯茎は痩せるの?
美しい口元を維持するための秘訣をピックアップ
歯茎が痩せる・下がる現象の原因のひとつは、加齢です。でも、日々きちんとケアをすることで歯茎の老化を防ぐことが可能です。また、実は良かれと思っていたことが歯茎を痩せさせる・下がらせてしまう原因だということをご存じでしょうか。今からでも遅くありません!改善法、治療法を知っておきましょう。
歯茎が下がると9.7歳ほど老けて見える、というアンケート結果があります。健全な歯茎は、歯の健康のためにはもちろんですが、美容のためにも大事な要素。美しい歯茎を維持していく前提知識として、歯茎が下がる原因を詳しく理解しておきましょう。
誤った歯磨きのやり方等が原因となり、歯や歯周ポケットには徐々に歯垢が蓄積していきます。蓄積した歯垢は、年月をかけて少しずつ歯を侵食。やがて歯周病を発症し、歯茎がだんだん下がっていったり、痩せていったりします。
また、皮膚のハリを維持するためにコラーゲンが大事な役割を果たしていることはご存知だと思いますが、歯茎を構成する60%はコラーゲンです。加齢による歯茎のコラーゲンの減少が、歯茎が下がってくる一つの要因でもあります。
35~39歳の女性1,000名を対象とした、あるアンケート調査が実施されました。調査では、まったく同じ顔の女性のイラストを2枚用意。ただし、一方のイラストだけ、歯茎を下げた状態に描きました。双方のイラストを比較し、イラストの女性が何歳に見えるかを尋ねたところ、正常な歯茎の女性のイラストは平均26.4歳という回答。それに対して、歯茎の下がった女性のイラストは平均36.2歳という回答に。歯茎が下がるだけで9.7歳も老けて見られたのです。
※参照元:「女性の見た目印象と口元」に関する意識調査を実施|株式会社オールアバウト、小林製薬株式会社のプレスリリース
調査日:2013年2月27日
調査対象:35歳以上60歳未満の女性<ジャストシステム会員>
有効回答数:1000件
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ジャストシステム
歯磨きを怠ったり、誤った歯磨きの習慣が身に付いていたりすると、歯や歯茎の歯周ポケットの中には、徐々に歯垢がたまっていきます。歯垢がたまると、その中では歯周病菌が爆発的に増加。歯周病菌が放出する酵素によって歯槽骨と呼ばれる組織を溶かし、やがて歯周病へと進んでいきます。歯槽骨は歯を支えている大事な骨。この骨が溶解することによって、歯茎は少しずつ下へと退縮。やがて歯が失われていくことになります。
歯周病を長く患うことは、歯周ポケットの中で長期的に炎症が発生しているということ。歯周ポケットの中での炎症の繰り返しは、歯茎の中にあるコラーゲンを徐々に減少させていきます。コラーゲンは肌のハリを維持するための大事な成分。歯茎も肌の一部なので、減少することによって歯茎は下がっていくことになります。なお、歯茎を構成している成分の60%はコラーゲン。歯周病による歯茎のコラーゲンの減少は、歯茎を下げる大きな原因になるのです。
歯槽骨の溶解も歯茎のコラーゲンの減少も、いずれも歯周病が大きな原因。歯茎を下げないようにするためには、歯周病を予防することが大事です。歯周病予防のポイントは、歯周病の初期症状を見逃さないこと。歯茎が赤く腫れて盛り上がる歯肉炎という症状が、歯周病の初期症状です。この段階で適切な対処をすれば、その後、本格的な歯周病へ発展することを食い止めることが可能。歯肉炎を確認した場合は、速やかに歯科医院に行き適切な処置・指導を受けるようにましょう。
誤った歯磨きと正しい歯磨きとの違いは、歯垢をきちんと落としているかいないか、という点。歯垢を完全に落としきれていない歯磨きを、誤った歯磨きと考えてください。誤った歯磨きで歯垢が蓄積すると、やがて歯周ポケットの中には歯周病菌が繁殖。歯周病の症状が悪化すると、すでに説明したように、骨が溶解したり歯茎のコラーゲンが減少したりなどし、歯茎が下がっていきます。歯茎が下がらないようにするためには、歯垢を完全に落とす正しい歯磨きを実行することが大切なのです。
強い力でゴシゴシとブラッシングすると、かえって歯垢は落ちません。歯垢は、ブラシの先端によるブラッシングで除去できるもの。力を入れるとブラシが前後左右に広がってしまい、歯にブラシの先端が当たらなくなってしまいます。さほど強い力を入れていないと自覚している人でも、その多くは力を入れ過ぎています。目安は、ブラシの先端が曲がっていないかどうか。ブラッシングの時に必要な力は、ほんのわずかです。
歯ブラシを濡らした後に歯磨き粉を乗せる人が、多く見られます。歯磨き粉の泡立ちを良くしたいという理由や、ブラシの先端を清潔にしてから歯を磨きたいという理由が、その背景にあるのでしょう。歯ブラシを濡らしてから歯磨き粉を乗せると、確かに泡立ちが良くなります。あっという間に、口の中全体に泡の爽快感が行き渡ります。しかし、その爽快感ゆえに、歯をしっかり磨いたという錯覚が生じます。歯磨きで必要なことは、泡立てることではなく、歯垢をブラシで落とすことです。
恐らく、ほぼ全ての人は歯磨き粉を歯ブラシの上に置くように乗せているでしょう。しかしこのやり方では、歯磨き粉は歯の特定の一箇所(最初に歯磨き粉が付着した辺り)に集中して付いてしまうことになり、全体に均等には行き渡りにくくなります。歯磨き粉は、ブラシに乗せるように置くのではなく、ブラシの中に押し込むようにしてセッティングを。そうすることによって、歯の全体に均等に歯磨き粉が行き渡るようになります。
ブラッシングを終えた後、口の中を何度もすすぐ人がいます。口の中に歯磨き粉の成分が残らないよう、しっかりとすすぎたいということなのでしょう。気持ちは分かりますが、しかしこの方法もNG。歯磨き粉の中には、歯を丈夫にするためのフッ素が含まれています。ブラッシングの後に何度も口の中をすすいでしまっては、大切なフッ素までも流されてしまいます。ブラッシング後のすすぎは1回で十分です。
市販されている歯ブラシの中には、先端がギザギザした形状になっている歯ブラシがあります。あるいは、ブラシを真ん中に集中させるような形状の歯ブラシもあります。各メーカーが工夫し、様々な形状の歯ブラシを販売しているようですが、歯垢を落とすという目的に照らせば、ブラシの先端に何の工夫もないプレーンなタイプを選ぶべきです。壁に付着した汚れを落とすとき、先端がギザギザしているブラシよりも、普通の形状のブラシを使ったほうが効果的。歯についた歯垢を落とすときも、発想は同じです。
歯垢は、歯の表面全体というよりも、歯茎寄りの歯周ポケットのあたりに多く付着しています。よって歯磨きの際には、歯の表面全体を均等に磨くイメ―ジではなく、歯茎寄りの部分を念入りに磨くようにしましょう。歯科医や歯科衛生士の教科書には、歯周ポケットに対して歯ブラシを斜め45°にさすようにして磨く、という方法が王道として紹介されています。また、それとは逆向きの斜め45°で磨く方法も有効と言われます。いずれの方法でも、「歯茎付近の歯」を念入りに磨くよう意識してください。
何本もの歯をまとめて横にブラッシングするのではなく、意識して1本1本の歯を磨くようにしましょう。「この歯を磨いたから、次は隣にあるこの歯を…」という具合です。ブラッシングの横幅は5mm~1cm程度。狭い幅で小刻みに5秒程度ブラッシングし、その後、隣の歯を同じようにブラッシングします。慣れるまでの間はとても時間がかかりますが、習慣化すれば2分ほどで全体の歯磨きが終わるようになります。
トンカチを持つときとペンを持つときとでは、握り方の要領が違います。一部にトンカチ型で歯ブラシを握って歯磨きをする人がいますが、正しい握り方はペン型です。トンカチ型では、磨く際に無意識で力が入り過ぎてしまいます。ペン型であれば、無意識でも力はあまり入りません。力を入れて磨くと、逆に歯垢が落ちにくくなることは、すでに説明しました通りです。力を入れないために、歯ブラシはペンを持つ要領で軽く握ってください。
歯ブラシだけで完全に歯垢を落とすことは、簡単ではありません。補助的に、歯磨きの周辺グッズを活用し、より効果的に歯垢を落としていきましょう。有効な周辺グッズの筆頭は、デンタルフロス。歯間にたまった歯垢や食べ物のカスを落とす、歯科専用の糸です。また、ブリッジなどをしている人には歯間ブラシも有効。歯間ブラシには各種のサイズがあるので、必要な人は歯科医院で適切なサイズを確認してもらいましょう。就寝前にデンタルリンスで口内を殺菌しておくことも、歯周病予防には有効です。
歯茎が下がってくる原因として、加齢、歯周病、誤った歯磨きなどを紹介してきましたが、これらの共通点は、歯周病が原因ということ。しかし、歯周病とはまったく別に、噛み合わせの悪さが歯茎の退縮の原因になることもあります。上下の歯の噛み合わせが悪く、歯槽骨が溶けてしまい、その結果、歯茎が下がってくるという症状です。噛み合わせの悪さが原因で歯槽骨が溶けたり歯が揺れたりする症状のことを、専門的には咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)と言います。
一般に、骨は硬くて丈夫なものというイメージがあります。しかし骨の内部を顕微鏡で覗いてみると、まるでスポンジの内部のような網目状で、網目の中には無数の空間もあります。ここに強い力が加わると、空間は押しつぶされ骨が徐々に溶解。この現象が歯槽骨で起こることを、咬合性外傷と言います。咬合性外傷が起こる部位は、特に強い力が加わることの多い奥歯。しかし奥歯に起こる咬合性外傷の原因の多くは、実は前歯の噛み合わせの悪さにあると言われています。
一見、前歯の歯並びがきれいでも、実はきちんと噛み合っていないことがあります。これを専門用語でオープンバイトと言います。直訳すれば「開いた噛み合わせ」ということです。オープンバイトの場合、本来であれば前歯で噛むべきものを噛めず、結果、前歯が負担すべき力を奥歯が担ってしまうことになります。食事のたびに奥歯には過剰な力がかかることになるので、徐々に奥歯の歯槽骨は咬合性外傷を発症。骨の溶解を原因に、歯茎が少しずつ下がっていくことになります。
上下の前歯の位置にズレがあり、下の前歯が上の歯茎と噛み合う形になっている例があります。これを専門用語でディープバイトと言います。直訳すれば「深い噛み合わせ」ということですが、意訳すれば「上の歯よりも奥にある歯茎との噛み合わせ」ということになります。ディープバイトの場合も、オープンバイトと同じく、前歯は本来負担すべき力を負担していません。結果、奥歯への力の比重が増加。咬合性外傷を発症し、歯槽骨の溶解から歯茎の退縮へと至ることがあります。
前歯の噛み合わせには問題がないものの、犬歯が八重歯の状態になっているなどの理由で、上下がきちんと噛み合っていない場合があります。犬歯の噛み合わせが悪いと、歯の構造上、奥歯は横からの力が加わる状態となります。奥歯はタテからの力には強いのですが、横からの力には弱め。あらぬ方向からの余分な力が奥歯へと加わることとなり、奥歯では咬合性外傷が発症することも。結果、歯槽骨が溶けていき、歯茎が下がってくることがあります。
通常、噛み合わせたときに前面に出るのは、上の前歯です。ところが逆に、噛み合わせた際に下の前歯のほうが前面に出てしまう例があります。この状態のことを、専門的には反対咬合と言います。反対咬合の場合、上下の前歯には噛み合わせの力がほとんど加わりません。前歯が負担すべき力は奥歯へと回され、その負担の蓄積で奥歯は咬合性外傷に至ることがあります。やがて歯槽骨が溶けていき、歯茎が下がってくる場合もあります。
歯周病も咬合性外傷も、やがては歯槽骨の溶解から歯茎の退縮へと至るという点で、症状が共通しています。しかし歯槽骨溶解が発症する部位については、それぞれ大きく異なります。
歯周病の場合、歯周病菌が口の中全体に存在していることから、すべての歯槽骨において均等に症状が進行する傾向があります。それに対して咬合性外傷の場合、一部の歯槽骨に負荷がかかり過ぎていることが原因なので、歯槽骨の溶解も一部の骨に限定されます。
もっとも、咬合性外傷が複数の歯に同時に発症した場合には、歯科医師でも歯槽骨の溶解の原因を特定するのは難しくなるとされています。
歯茎が痩せる・下がる原因をご紹介してきましたが、一番の原因は歯周病です。そのため一番の予防方法は、やはり歯磨きの仕方を見直すことです。歯周病の進行を防ぐことが、歯茎が下がってしまうのを防ぐことに大きくつながります。
まずは、夜寝る前に必ず磨くことを徹底します。歯磨きをせずに寝ると口内は細菌だらけ。寝ている間に、歯を守ってくれる唾液量がグンと減りますので、寝ている間の菌の増殖を抑えるためにも寝る前の歯磨きは大変重要です。夜寝る前と朝起きた後、そしてできれば食後は歯磨きをする、という習慣付けをしましょう。
歯ブラシ選びも重要。自分が使いやすく、痛みや違和感のない歯ブラシを選ぶことが大切ですが、歯周病の進行を防ぐためには「軟らかいブラシ」「小さなヘッド」のものが最適です。歯ブラシが傷んでくると磨いている歯も傷んでしまう恐れがありますので、歯ブラシは1~2ヶ月を目安に新しいものと交換するようにしましょう。歯磨き粉は付けなくてもいいくらいですが、付けないと違和感を感じるなら、粒子がなるべく細かい薬用歯磨き粉がおすすめ。粒子の荒いものや研磨剤入りのものは余計に歯茎を傷つけてしまうのでNGです。
歯ブラシは、ペンを持つように持ちます。この持ち方が余計な力が入らず丁寧に磨ける方法。そしてマッサージをするように、力を入れず小刻みに動かすように磨いていきます。
また、歯槽骨に必要な栄養素を積極的に摂取するのも歯茎の健康につながります。カルシウム、その他のミネラル、ビタミンCをはじめとしたビタミン類、コラーゲンを意識的に摂取することで、歯茎の健康を守ることができますよ。
丁寧に歯磨きをしていても歯茎が下がってしまうことはありますし、そうして一度下がってしまった歯茎をもとに戻すことは簡単なことではありません。ただ、絶対に戻らないというわけではありませんので、気になる方は歯科医に相談してみることをお勧めします。
下がった歯茎の治療法としては、『遊離歯肉移植』『結合組織移植』という代表的な2つの治療法があります。これは、他の部位からとってきた歯肉や結合組織を、痩せて気になる部分に貼りつけるというもので、移植してから数ヶ月後にはしっかりとした歯肉となります。
また歯茎の痩せ・下がりが、噛み合わせの悪さが原因だと考えられる場合には、歯茎の治療だけでなく、まず咬合調整を適応されることがあります。歯や補綴物をほんの少しだけ削って調整するのが一般的で、咬み合わせを0.1mm変えるだけで感覚が大きく変わります。他にも、歯と歯茎を引っ張りあげる「エクストルージョン」という方法や、隣りの歯の歯茎を移動させる「歯肉弁側方移動術」といった方法があります。
これらの方法は医師の技術や患者さんの歯茎の状態に大きく関係するため、信頼できる医師の下でじっくりと診断を行ってもらってから治療法を決めていきましょう。
歯茎再生や歯肉移植などの治療においては、クリニックや医師の選び方が重要となります。
特に重視したいのが、総合的な治療が行えるかという点と治療実績。
歯茎が下がるという症状は、これまで解説したようにさまざまな原因によって引き起こされます。原因が異なれば治療方法も大きく異なるのは当然ですし、あらゆる原因が複合的な要因となり、あらゆる治療を行わなければならない可能性もあります。
特に歯茎はインプラント治療とも密接な関係にあるため、インプラントに詳しい医師がいるクリニックでまずは相談してみることをおすすめします。
治療実績に関しては公式サイトでも確認できる時代となりました。電話やカウンセリングにて、実際にこういった症状の治療は行えるか一度聞いてみるべきです。
また、近年ではセカンドオピニオンという考え方が、歯科業界でも主流となりつつあります。歯肉移植といった大がかりな治療の場合は特に、「自身の症状がどういった状態であるのか」「どのような治療が最適であるか」を複数院であらゆる角度から診てもらい、ご自身で治療方法を選択していくべきだといえるでしょう。
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